ヴィオラ・ダ・ガンバ関係の音  G.2.2 (3) バッハにとってのヴィオラ・ダ・ガンバ  G.2.2 (6) 18世紀なっても,まだヴィオラ・ダ・ガンバ の奏者がいた   G.2.2 (7) (a)アルペジオーネはなぜ広がらなかった? ●b-1 Viola da Gamba b-1a Bach_BWV1029.wav J. S. Bach作曲 「ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ」第3番 第1楽章の冒頭部分 J. S. Bachはヴィオラ・ダ・ガンバととチェンバロのためのソナタを3曲(BWV 1027-1029) 残しているが,そのうち,1029は曲想がヴァイオリン属のためのブラデンブルク協奏曲第3番 (BWV 1048)と非常によく似ていると指摘されている. ここではその2曲の各一部を比較できるように入れておく. BWVはガンバ・ソナタの方が若いが,BWVは音楽ジャンル別・楽器別にまとめられたものなので, BWVが若い方が先に書かれたとは言えない. 音楽史的にはブラデンブルク協奏曲の方が先に書かれたと考えられているが, 曲想が似ていることと作品の仕上がり具合から,ガンバ・ソナタの方が先に 書かれ,ブランデンブルク辺境公に献呈するためにそれをリファインしたものが ブラデンブルク協奏曲であろうとの推察(チェロ・ピッコロ奏者アンナー・ビルスマなど)もある. ヴァイオリン属の楽器の演奏を聴き慣れている耳には,ヴィオラ・ダ・ガンバの演奏は 強拍をアップボウで弾くからか,締まりがないように感じる. ここでのヴィオラ・ダ・ガンバの奏者は古楽の研究者でもあるオランダのWieland Kuijken (ヴィーラント・クイケン)である. 現代の演奏では,ヴィオラ・ダ・ガンバの代わりに5弦のチェロ・ピッコロ(調弦はC2-G2-D3-A3-E4) が使用されることもある. b-1b Brandenburg3.wav J. S. Bach作曲 ブランデンブルク協奏曲第3番 第1楽章の冒頭部分 楽器はヴァイオリン3,ヴィオラ3,チェロ3,通奏低音(ヴィオローネとチェンバロ) 演奏:Karl Richter指揮とチェンバロ Munchen Bach Orchester ●b-2 Abel_Arpeggio  G.2.2 (6) 18世紀になってもまだヴィオラ・ダ・ガンバの奏者がいた. この曲は最後のガンバ奏者とされるフリードリッヒ・アーベルのもので, ヴィオラ・ダ・ガンバの特徴的な奏法であるアルペジオを主体としたものである. Abel_Arpeggio_VdG.wav 曲: Carl Friedrich Abel "Arpeggio für Viola da Gamba" ヴィオラ・ダ・ガンバの最後の名手と言われたフリードリッヒ・アーベル (Carl Friedrich Abel,1723-1787)が書いた「無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバ のためのアルペジオ」で,全曲がアルペジオで埋め尽くされている. 「ヴィオラ・ダ・ガンバのための」となっているが,多分技巧的な演奏用の ヴィオラ・ダ・ガンバの「ヴィオラ・バスタルダのための」である. 弦を7本にして,この曲のアルペジオを弾きやすいように調弦して弾くことを 想定して書かれた曲である. 楽器:ヴィオラ・バスタルダ 奏者:Petr Wagner(You Tube) ヴィオラ・バスタルダ(別名リラ・ヴィオル):技巧的な演奏用の7弦のヴィオラ・ダ・ガンバ. 弾く曲に合わせて多様な調弦法が採られたのでこの名称(バスタルダ:多様な,変種の)がある. ●b-3 Schubert-Arpeggione_Sonata Arpeggione.wav 付録G.2.2 (7) (a)アルペジオ―ネはなぜ広がらなかった? Franz Schubert "アルペジオーネとピアノのためのソナタ イ短調"(通称「アルペジオーネ・ソナタ」)1824年 演奏:ロストロポーヴィッチ(Mustislav Rostropovich, cello)    ピアノは作曲家のブリッテン(Benjamin Britten)1968年録音 現代ではアルペジオーネがないので,通常はチェロで演奏される.ヴィオラが使われることもある. 同じ指遣いで弾くという意味があるからか,コトラバスで弾くこともあるようである. アルペジオーネはヴィオラ・ダ・ガンバではないが,フレット付き6弦4度調弦の擦弦楽器で, ヴィオラ・ダ・ガンバの再来とみなせるので,ここに入れた. 楽器がない上に,この楽器のための曲がほぼこれだけしかないためか,この楽器専門の奏者というのは 聞いたことがない. ヴィオラ・ダ・ガンバの奏者なら同じように弾けるのではないかと思うが,ヴィオラ・ダ・ガンバで この曲を弾いたというのも聞いたことがない.運弓(ダウンボウとアップボウ)が逆なのであろう. 8小節のピアノ前奏に続いて,アルペジオーネならぬチェロが出てくる.